今回は北野唯我さんの著書、「転職の思考法」についてご紹介します。
この本は私が転職する際にも熟読し、転職先を選定するヒントを得たものです。
転職というのは、「失うことを伴う意思決定」であるといえます。
そのような、失うことが前提の判断を頻繁に経験する人なんていませんよね?
ですから、現在のポジションを放棄する「転職」というのは、誰もがあまり経験したことがないために失敗したり、なかなか踏み出せなかったりするのです。
そんな時に必要なのは知識や情報よりも、思考法であると著者は言っています。
本書では転職に必要な思考法が、ストーリ形式で紹介されていきます。
- 仕事の「寿命」が切れる前に、伸びる市場に身を晒せ
- 「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳に過ぎない
- あなたがいなくなっても、確実に会社はまわる
- 仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?
仕事は、資本主義社会の現代を生きる多くの人にとって、大きなウェイトを割かざるを得ないものです。
それだけ大事なことなのに、中々人には聞けないのではないでしょうか?
人生を左右するほど大事なことを、本書は教えてくれます。
・一度でも転職を考えたことがある方
・転職しようと決めたものの、何から手を付けたらいいかわからない方
・現在の職場に強いストレスを感じている方
思考法の一つを紹介:上司を見て働くか、マーケットを見て働くか
個人事業主やフリーランスでもない限り、人は組織=会社に属して仕事をするしかありません。
そこにいる人々は、部下や上司、同僚といったカテゴリーに分類されます。
では、同じ会社で働いている人の中で、他の会社でも仕事ができる人と、できない人の違いは何に起因するでしょうか?
それが、「上司を見て働くか、マーケットを見て働くか」です。
上司の顔色を窺い、言われたことをきっちりこなしている人材は、他の会社ではその能力は役に立ちません。
一方で、自分をマーケット全体の中の一部ととらえて仕事をする人は、他の会社でも能力を発揮できるでしょう。
この、他の会社でも発揮できる能力をマーケットバリュー=市場価値といいます。
これを意識して働くかどうかが、転職をする際のその人の市場価値を決めるのです。
自分の市場価値を測る
では、市場価値は何で決まるのでしょうか。それは、
- 技術資産
- 人的資産
- 業界の生産性
です。

人材の市場価値はこの三つの要素に分解することができます。
この3つを結んだ箱が大きいほど、給与の期待値は高く、小さいほど給与は低くなります。
そして、理想的なキャリアは、少なくとも二つ以上を高くする必要があります。
- 技術資産・・・価値ある技術をどれだけ持っているか、「専門性」と「体験」を有しているか。
- 人的資産・・・人脈。指名で仕事をくれる人間がどれだけいるか。
- 業界の生産性・・・その業界にいる人間が、平均一人当たりどれだけの価値を生み出しているか。
本書ではこの中でも「業界の生産性」が最も重要であると述べています。
衰退していく業界で働くということは、下りのエスカレーターを逆に登っていくようなものです。
一方で、上りのエスカレーターであれば、同じスキルだとしてもより良い待遇を受けることができます。
正直、20代、30代の間は人的資産はなかなか形成されず、それが生かされるのは40代を過ぎてからでしょう。
なので若い間は専門的な技術や体験をするか、業界の生産性が高いところで働くしか、自分の市場価値を高めることができないといえます。
読後に感じたこと
私がこの本を読んだのは、新卒で入社して2年程たったころでした。
なんとなく今のままではいけないんだろうなと感じていた私の頭の中のモヤモヤを、ビシバシと言語化されたような感覚を覚えました。
当時は研究職という専門的な職業ではありましたが、当時の会社での専門性には市場価値がないこと、また業界の生産性も低いことから転職を考えるようになりました。
それまで積み上げたものを放棄するという決断はなかなか難しく、苦悩を伴うものでした。
しかし転職した今となっては、当時決断した自分を誇りに思います。
今では、より業界の生産性が期待できる分野の研究職として働いていて、自分が進もうとしているキャリアに納得できています。
人口減少が確定している日本企業は、なかなか難しいかじ取りを迫られていますし、そこで働く我々もそれは同じです。
先を見通せないからこそ、これからの仕事をどう考えていくか、本書はその一助となること請け合いです。
当記事では紹介していない「転職の思考法」のエッセンスがまだまだ紹介されています。
少しでも転職を考えたことがある人は、もしくはすでに転職を考えている人は、一度読んでみることを強くお勧めします。
新しい挑戦を行う背中を押せたのなら幸いです。
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