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【見えないウイルスに怯える方に】「リウーを待ちながら」朱戸アオ

今回はコロナ禍の今だからこそ面白みが増す漫画、「リウーを待ちながら」(講談社、全3巻)をご紹介します。

なお、簡単なあらすじは述べますが、ネタバレは一切行っていませんのでご安心ください。

まず、この作品はアルベール・カミュの超ベストセラー「ペスト」をもとにして描かれています。

「ペスト」は、フランスの植民地であるアルジェリアのオラン市をペストが襲い、苦境の中、団結する民衆たちを描いています。

またその中で、無慈悲な運命と人間との関係性が問題提起されています。

医者、市民、よそ者、逃亡者と、登場人物はさまざまですが、全員が民衆を襲うペストの脅威に、助けあいながら立ち向かう様を描いています。

そしてこのペストが現代の日本で起こったらどうなるかが、「リウーを待ちながら」で描かれています。

どうでしょう、コロナウイルスが蔓延している現代社会と似た様相だとは思いませんか?

むしろ、コロナウイルスにまみれた現代を予想していたかのようで、畏怖の念に駆られます。

 

アウトブレイク前夜

タイトルにある「リウー」とは、カミュの「ペスト」で登場する医者、ベルナール・リウーのことです。

また、不条理演劇として知られるサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」をかけたタイトルを冠しています。

ベルナール・リウーは街中で死者が出る原因をペストによるものだと気づきますが、どうすることもできず、感染の渦の中に巻き込まれていきます。

そして感染者を助けるために奮闘します。

 

「リウーを待ちながら」でも、主人公は医師の玉木先生です。

この玉木先生をリウーになぞらえて物語は進行していきます。

感染のきっかけは日常の末端、些細なところから始まります。

異変なのか、偶然なのかわからない「ちょっと変わった日常」に、感染の発端は潜んでいました。

コロナウイルスは中国の武漢から感染が拡大したと言われていますが、今回のペストは、玉木先生が暮らす横走市から感染が拡大していきます。

 

生活感あふれる日常の緻密な描写

この漫画の面白いところは、なんといっても日常の描写が細かいところです。

ほんとにこういったことがあったのではないかと疑うほど、緻密に描かれています。

これはある種、カミュの「ペスト」ではできなかったことなのではないでしょうか。

徐々に壊れていく風景に胸が痛みます。

 

世の中はいつも不条理です。

 

不条理に対して、我々はどうすることができるのでしょう。

この物語の中では、やはり「ペスト」からの引用で、こう述べられています。

こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかし、ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。

(アルベール・カミュ「ペスト」(新潮文庫)より抜粋)

なかなか難しいことです。

コロナ禍で、誠実であれた人がどれだけいたでしょうか。

マスクが品薄になったときも、自分(とその大切な人)さえ助かればと、誰もが思ったことでしょう。

「不条理」と「誠実」、共存することが難しい二つの性質について、それでも誠実であろうとする人の強さを改めて認識したいです。

そしてその強さを兼ね備えた人が評価される世の中であってほしいと、願わずにはいられません。

現在においては、なんといっても医療従事者の方々です。

最大の敬意をもって、感謝を申し上げます。

読後に感じたこと

今、世の中は大変な状況にあります。

私がこの漫画を読んだときはコロナウイルスなんてものはなく、漫画の中の出来事は、想像上のものでしかありませんでした。

しかし今確実に、我々の日常にウイルスの影響があります。

日常の定義が変わってしまった世の中において、誠実であることの難しさと大切さを痛感するばかりです。

 

私にとっての誠実さとは、程よく利他主義であることかなと思います。

人への誠実な好意は、やがてまわりまわって自分に返ってくると信じましょう。

利己的になった先には、より大きな絶望が待ち構えているでしょう。

簡単なことではありません。

自分影響が届く範囲で、誠実であろうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

  

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