本の要約 読書

【サイコパスの正体を知りたい方に】「サイコパス」中野信子

今回は中野信子さんの「サイコパス」を処方します。

なんともシンプルなタイトルですが、本著は脳科学的、心理学的にサイコパスとはどういったものなのかを論じたものです。


最近巷では「サイコパス診断」なんてものもあるため、サイコパスという言葉を耳にしたことがある人がほとんどでしょう。


では、サイコパスとはどういった人のことを指すのか、身体的な特徴において何か特異性をもつのでしょうか。
こういった疑問について端的に答えらえれる人は、ほとんどいないでしょう。

本著ではそういった

  • サイコパスの身体的、心理的特徴
  • サイコパスの歴史
  • なぜサイコパスは存在するのか

といったことについて、存分に論じられます。


本著では人類の100人に1人はサイコパスであるといわれています。
もちろん、国民性や地域によってその数に偏りはあるでしょうが、全く関係ない問題とは言い切れません。


実際に凶悪な犯罪や事件は頻繁に起きています。

今、あなたの隣にいるかもしれないサイコパスという存在について、知っておくに越したことはないでしょう。

この本を読んでいただきたい方

・サイコパスの正体を知りたい方
・人の理解できない行動に悩む方
・自分はサイコパスかもしれないと思ったことがある方

☑サイコパスの身体的特徴

外見

JR山手線の車両の店員は約150名です。満員電車となると乗車率は150%位になるため、150(人)× 150(%)= 225(人)となるので、一つの車両にサイコパスが二人は乗っている計算になります


もし一目で「この人はサイコパスだ!」と判断できればいいですが、そんな特徴はあるのでしょうか。

ドイツのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学の研究グループが、少年院に収容されている男性を対象として調査した結果、顔の形状において横幅の比率が大きい男性ほど、サイコパシー傾向が高い、ないしは反社会的傾向が強いという結果を得ました。

 
つまり、顔が細長い男性よりも、横幅があってごつい印象の顔のほうがサイコパスである可能性が高いということになります。

 
一般的に男性ホルモン(テストステロン)濃度が高いほど、顔は横に広くなる傾向があります。

そしてテストステロンの分泌量が多いと、競争心や攻撃性が高まることが明らかにされています。

これは確からしい研究成果ですが、あくまで傾向がある程度で、顔の横幅が広いからといって即座にサイコパス傾向が高いと判断するのは尚早であるといえそうです。

 
一目見て、サイコパスだと判別できる特徴があればいいですが、残念ながら見た目で判断できる方法はないといえるでしょう。

 

サイコパスは脳の「偏桃体」と呼ばれる部分の活動が、一般人と比べて低いことが明らかになっています。

偏桃体は大脳辺縁系の一部であり、大脳辺縁系は快感や喜び、不安、恐怖といった情動を司る領域です。


中でも偏桃体は快・不快や恐怖といった、人間の基本的な情動を決める場所です。

 
つまり、サイコパスの「偏桃体の活動が低い」ということは、恐怖や不安など、動物が本来持っている基本的な情動の働きが弱いということになります。

例えば、あなたが嘘をついたとします。

そうすると、嘘をついた事実や、辻褄を合わせなければいけないことに対してストレスや不快感を覚えるでしょう。


そして、もう嘘をつかないでおこうと自分を顧みることになります。

しかし、サイコパスは嘘をつくことによって不快な感情を覚えることはありません。

いくらでも嘘をつき続けます。


たとえ嘘がばれて痛い目にあったとしても、不安や恐れといった感情がないため学習せず、また嘘をつくようになります

さらには、サイコパスの脳は偏桃体と前頭前皮質の結びつきが弱いことがわかっています。


前頭前皮質は物事を長期的な視点に立って計算したり、様々な衝動に対してブレーキをかける役割を担っています。


偏桃体と前頭前皮質の結びつきができると、自分がおかれた社会的状況と、快・不快を組み合わせてバランスを取りながら判断できるようになります。


この機能が高い人は、衝動的な行動が抑えられ、対人関係で適切なふるまいができます。

逆にこの部分の機能が低下すると、他の人に対して、していいことと、してはいけないことの区別が理解できなくなってしまいます。

例えるなら、お腹がすいているにもかかわらず、お金を持っていないとします。

だからといってスーパーに入って万引きをしてまでお腹を満たそうとは思いませんよね。


空腹をなんとかしたいという不快な情動に対して、万引きなんてしてはいけないと、良心のブレーキをかける働きです。

サイコパスの脳は、いわば他者への共感を持つことができない脳であるといえるでしょう。

☑サイコパスの心理的特徴

積極性が高く、不安を感じない

一般的に、自分が何もできない環境下にいるとき人は不安を感じ、逆にコントロールできるときは不安を感じなくなります。


しかしサイコパスは不安が高くなる、コントロールできないような状況下においても、それをコントロールしようとする傾向が高いことが、ベルゲン大学のチームによって明らかにされています。


サイコパスは不安を感じる場面でも非常に積極性が高く、その場に介入して空気を握ろうとする傾向が強いと考えられます。

不安という点でサイコパスを分類すると、

  • 「逮捕されやすいサイコパス」
  • 「逮捕されにくいサイコパス」


に分類することができます。

普通の人なら自分の身に危機が迫っていたら、どうしても不安を感じますよね?

しかし「逮捕されやすいサイコパス」は自身が危機的な状況にさらされても不安感情が低いままで、その状況(=逮捕される可能性)を回避できないといえます。


一方で、「逮捕されにくいサイコパス」もやはり不安感情は普通の人と比べて基本的に低いのです。


ところが、いよいよこれは危険だというレベルにさしかかると、一気に不安感情が跳ね上がります。ギリギリの状況になると不安が喚起され、危機を回避できるのです。

こういう意味では、「逮捕されにくいサイコパス」のほうが、たちの悪い危険なサイコパスであると言えるでしょう。

相手の目から感情を読み取るのが得意

サイコパスは相手の目つきや表情から、その人が置かれている状況を読み取る能力に長けています。


研究グループが人間の目のあたりだけの写真を見せて、その人の感情を読み解かせるという課題を与えると
一般人の正答率は30%ぐらいであるのに対して、サイコパスの正答率はなんと70%にもなります

つまり、サイコパスは他人が悲しんでいたり苦しんでいたりする目つきを見て、共感することはないが、そのような状況に置かれていることを鋭く感じ取れるということです

感情を揺さぶる言葉に対する反応が薄い

一般の人は「木」という言葉を目にした時と「殺人事件」という言葉を目にした時では、後者の場合のほうがより不安感情を掻き立てられます。


しかし、サイコパスの場合はその差がないのです。「木」と「殺人事件」も、「コーヒーを飲む」と「あなたを愛しています」も脳波の動きに差はみられませんでした。

そして恐ろしいことに、サイコパスは自分自身で共感性がないことに薄々気づいています


気づいているからこそ、他者に共感しないふるまいは自分にとって不利になることを理解しており、だからこそ相手の感情を読み、操作しようとするのです。

道徳性を軽んじる

アメリカの心理学者ジョナサン・ハイトは道徳心を以下の3つに分類しています。

  1. 他人に危害を加えないようにする道徳心
  2. フェアな関係を重視する道徳心
  3. 共同体への帰属、忠誠に関する道徳心
  4. 権威を尊重する道徳心
  5. 神聖さ、清純さを大切に思う道徳心

ハイトの研究によると、サイコパスはこの中でも1、の「他人に危害を加えないようにする道徳心」と2、「フェアな関係を重視する道徳心」のスコアが極端に低いことがわかりました。


一方で、他の3つの道徳心(3~5)に関しては、一般の人と比較して高いスコアが出たのです。


つまりハイトの研究からは、他人に危害を加えることには抵抗がないのに、自分が属している組織での帰属心や権威、神聖さを重んじるという「反社会的集団の組織倫理」を、サイコパスは有していることがわかります。

自分の損得と関係がないことには無関心

サイコパスは人間的な感情が欠落していると述べましたが、すべての感情を失っているわけではありません。
ただし、自分の損得と関係がない人のことには無関心です。

自分と直接的な利害関係がなければ、誰かが得をしていても興味を示すことはありません。


一方で自分に直接被害が及ぶことに関しては過剰に反応します。
サイコパスは自分が所有しているもの(お金や恋人など)が奪われたときは、自分が罰を受ける可能性を顧みず、果敢に奪い返すための行動を起こします。

以上の5つがサイコパスの心理的特徴です。いかがでしょうか。


サイコパスがどんな特徴を有するのかかなりわかってきたことと思います。

☑読後に感じたこと

サイコパスという言葉を聞く機会は少なくなく、私自身はその言葉を「なんとなくやばい人、異常な行動を平気でできる人」ぐらいの認識でいたのですが
こうして特性を言語化すると、恐ろしく感じました。


テレビで報道される凶悪事件の犯人の心の内を除いたようで、驚きと恐怖の感情が沸き起こりました。

では、サイコパスはどうして生まれるのでしょうか。本書ではそれについても述べられています。
詳細は読んでいただくとして、結論だけをいうと

  • 脳の機能に関する遺伝の影響は無視できない研究結果が得られている
  • 生育環境が引き金となって、反社会性が高まる可能性がある

この二つが相互作用すると、その人物はサイコパスとなってしまう傾向にあるようです。
逆に言えば、たとえ遺伝的にサイコパス傾向の強い遺伝子であったとしても、生育環境が良好であれば、その人はサイコパスにはなる可能性は低いということです


生育環境が劣悪な場合とは、幼い時に何らかの理由で母親と別れなければならなかったり、母親が妊娠中にアルコールを摂取したり、あるいは自らが幼いころの飲酒や、脳への物理的な衝撃などです。

もしかしたら私はサイコパスの遺伝子を持っているかもしれませんが、幸い前出のような環境にはいなかったがために、サイコパスにはならずにいられたのかもしれません。


自分が親になったときには、我が子のために愛情を降り注ごうと思います。

人がサイコパスになることに防ぐ手立てがあることを知れてよかったです。

自然発生的なサイコパスはおらず、あくまで人間の環境社会が生み出すものなのです。
皆さんも、身近な人を愛しましょう。

そのきっかけに少しでもなれたら幸いです。

長文にもかかわらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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