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【劇薬を摂取したい方に】「八本脚の蝶」 二階堂奥歯

今回は二階堂奥歯さんの唯一の著書、「八本脚の蝶」を紹介します。

この本は劇薬ですので、取り扱いには注意していただき、用法用量をお守りください。

 
この本は出版社に勤める女性編集者、つまり一般の方が自ら命を絶つ直前まで更新していたウェブ日記を掲載したものです。

それに加えて作家や恋人など、生前近しかった十三人の文章が収録されています。

この本を読んでいただきたい方

・本を読むことが好きな人
・死ぬために生きていると考えることがある人
・後頭部を殴られるような読書体験をしたい人

 

なお、このウェブサイトは2021年5月現在も存続しており、見ることができます。そのウェブサイトの名前が「八本脚の蝶」です。

(出典:二階堂奥歯 八本脚の蝶 (coocan.jp)


ただの一般人の日記か、と思わないでください。

無数の読書体験をした著者の思考世界を垣間見ると、その拡がりに圧倒されます。

日記という形態をとった文学です。

信仰とは、神に向かって自分の全存在を捧げること。
自我を手放しその御手にこの身を捧げること。
自分の存在を神によって支えてもらうこと。
私は神を信じていない。キリスト教の神に代表される、意思を持つ神を信じていない。
神が存在するならそれは信仰されるようなものではないだろう。
信仰されなければならない神を私は信じない。

その私が、架空の神を拵えて、その前に跪かずにはいられないということ。それは弱さのあらわれなのでしょうか? それとも敬虔さ?
しかし、何に対する?

(「八本脚の蝶」二階堂奥歯)より抜粋

☑驚異的な言語感覚


皆さんも一度は「死」というものを考えたことがあるでしょう。死んでしまいたいと、割と本気で考えたことがありませんか。


この世に普遍的にあるものなのに、日常ではなにか「悪いこと」のように扱われますが、死について考えることは重要な意味を持つと思います。

生きていくことは辛く、そして最後に待っているのは皆等しく「死」ですから。

著者の二階堂奥歯さんは、かなりヘビーな読書家で、生まれてからの日数よりもはるかに多くの書物を読んでいます。


仮に25歳だとして計算すると 25(歳)×365(日)=9125(冊)はくだらないということになります。

とんでもない数ですね。


本当かなと疑いたくなる気持ちはわかりますが、本著を読むと、それを信じざるをえません。


膨大な量の書物に触れてきたからこそ繰り広げられる思考の出力によって、平凡な読書体験しかしていない私の脳は麻痺しました。
もはや「思考を言語で表したもの」から次元が一つ上がったような、新しい言語体系のように感じました。

 

☑多読にはしると毒に侵される


凡人が多読をすると思考を他にゆだねることになり、自らの考えというものがなくなりパーソナリティの境界線があいまいになります。

強靭な精神力を持っていないと、多読は毒になりえます。


二階堂奥歯さんは早稲田大学第一文学部哲学科を卒業されております。

それゆえ、耐性はあったかと思うのですが、あまりにも多量の毒を摂取し続けるもんだから、いつしか許容量を超えてしまった…


彼女の文章を読んでいるとそんな感覚を覚えます。

その頃私は生きているのがおそろしかった。
そして決心した。私は決して子供を産まない。
私が耐えかねている「生」を他の誰かに与えることなど決してしない。

私は高校生で未成年で被保護者だから今はしないけれど、大人になって自分で生計を立てるようになったら、卵管圧挫結紮手術を受けよう。
避妊だとか、ましてや掻爬といった場当たり的な手段では足りない。私が生を与える可能性を完全に消し去ろう。
私は、産む機能を持たない身体を得ようと思った。
このおそろしさは、私で終わりにする。

(「八本脚の蝶」二階堂奥歯)より抜粋

☑おわりに

私自身、人は死ぬために生きていると思っています。

人生や生きていることに意味はないと考える虚無主義者です。

そのことを自覚しながらも、平凡に暮らしていける盆暗です。


二階堂奥歯さんの言語体系に出会えたことは、現在の自分にとってまぎれもなく幸運なことでした。

少し救われた気がします。

願わくば、現在も二階堂奥歯さんが生きていて、発する世界を享受したかった。

もし気になった方は読んでみてください。

この記事では二階堂奥歯さんの魅力を存分にご紹介することはできていません。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

 最後のお知らせ

二階堂奥歯は、2003年4月26日、まだ朝が来る前に、自分の意志に基づき飛び降り自殺しました。
このお知らせも私二階堂奥歯が書いています。これまでご覧くださってありがとうございました。

(「八本脚の蝶」二階堂奥歯)より抜粋

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