資本主義の現代を生きる多くの人にとって、仕事は切っても切り離せないものです。
だからなのか、「好きなことを仕事にしよう!」「コモディティ化しない職業に就こう!」といった、
ストレスフリーで働くことと、現代を生き残ることの両立を考えさせる書籍が、ビジネス書のコーナーでは目立ちます。
では、自分の好きなこと、やりたいことってなんだ?
こういった疑問は誰もが一度は思ったことがあるでしょう。
その答えは一人一人違うでしょうし、はっきりとこれだ!と言える人も少ないのではないでしょうか。
ただ、人類に共通するのは、幸せになりたいということです。
「俺は自分の幸せには興味ない!」なんて人は、まずいないでしょう。
では、どうすれば自分にとって幸せに思える職業に就くことができるのか。
そのことについて書かれた書籍が、鈴木裕さんの「科学的な適職 4021の研究データが導き出す最高の職業の選び方」です。
この記事では本書をもとに、科学的な適職選びでの「やってはいけない」を紹介します!
また、別の記事でについてもご紹介しています。
>>【幸福度の高い仕事に就きたい方に】「科学的な適職」鈴木裕
また、実際に一部上場企業からベンチャー企業に転職した私が、転職に関して書いた記事もよかったら読んでみてください。
【実体験】ベンチャー企業に向いている人、向いていない人の特徴
【ベンチャー企業への転職を成功させる3つの方法と確認すべきリスク】
・サラリーマンの方
・自分に何が向いているかわからない方
・転職を考えている人
やってはいけない①:好きを仕事にする

はぁ~?と思った方、落ち着いてください、待ってください、ページを閉じないでください。
きちんとデータがあるのです。
2015年にミシガン大学が、好きなことを仕事にする者は本当に幸せかを調べる研究を行いました。
研究チームは被験者の仕事観を、次の2パターンに分けました。
- A:適合派…「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるタイプ
- B:成長派…「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプ
結果は、Aのタイプが仕事に対する幸福度が高いのは最初だけで、1~5年といった長いスパンで見た場合、
幸福度・年収・キャリアのすべてのレベルにおいてBの方が高かったのです。
つまり、好きなことを仕事にするのではなく、情熱を注いでしたことを好きになるということなのです。
仕事に対して情熱を持てるか、幸福を感じるかは、あなたがその仕事に注いだリソースの量に比例します。
「好きを仕事に」では順番が逆なのです。
やってはいけない②:給料の多さで選ぶ

フロリダ大学の研究で、お金と仕事の幸福度に関する研究が行われました。
その結果、収入の高さと仕事から得る幸福度に、相関性は見られませんでした。
つまり、お金をたくさん稼ぐ仕事をしたからと言って、仕事に対する幸福度が上がるわけではないのです。
理由は二つあって
- 収入による幸福度は、年収800万円程度で頭うつ
- 収入が高くなっても、人は一年でその幸福に慣れてしまう
日本での年収の中央値は450万円程度ですが、そのあたりになるとある程度お金の心配がなく生活できるので、
それ以上は年収が上がっても少ししか幸福度は上がらず、やがて頭うちます。
もちろん、同じ条件でなら給料を高い方がいいでしょう。
しかし、ただただ給料が高くなることを求めて仕事を選ぶようでは、仕事から得られる幸福度は低いため、適職とは言えないでしょう。
やってはいけない③:業界や業種で選ぶ
この考え方が誤りなのにはシンプルな、二つの理由があります。
それは、
- 専門家だろうがなんだろうが、将来有望な業界など誰にも(何にも)予測できない
- 人間は自分の個人的な興味の変化も予測できない
からです。
どれほど著名な専門家でも、有名な研究機関でも未来のことは誰にもわかりません。
現在で例えばフィンテックが盛り上がっているからと言って、5年後、10年後も同じとは限りません。
コロナ禍を生きる我々は特にそれを思い知らされたのではないでしょうか。
また、今自分が興味があることが、10年後も同じように興味を持てているでしょうか?
逆に、10年前の自分の関心と、現在の関心は一致するでしょうか?
答えがNOなら、適職選びの際に業界や業種で仕事を選んではいけないことがお分かりいただけると思います。
やってはいけない④:仕事の楽さで選ぶ

誰でもきつい仕事は嫌ですよね。
できるだけ楽して稼げたらなぁ、なんて思うことは誰にでもあるでしょう。
ハードワークは言うまでもなくストレスレベルを引き上げ、寿命を縮めることにもなりかねません。
一方で、楽すぎる仕事もまた、病気になるリスク、死亡リスクを高めることがわかっています。
仕事の幸福度を高めるには、適度なストレスを受ける必要があるのです。
適度なストレスは
- 仕事の満足度を高める
- 会社へのコミットメントを改善する
- 離職率を低下させる
といったメリットがあります。
このいずれも、仕事の幸福度を高めているという事実に帰結するでしょう。
やってはいけない⑤:性格テストで選ぶ
就職サイトにアクセスすると、よく「性格診断テスト」のようなものを頻繁に見かけます。
例えば、「エニアグラム」「RIASEC」「マイヤーズ・ブリッグス(MBTI)」などです。
世界中の大学が分析した結果、このどれもが信ぴょう性に欠けることがわかりました。
同じ人が行っても再現性がなかったり、「安全」と「安定」といった抽象的で意味が似通った表現が異なる性格で使用されたりするからです。
なにかに救いを求めたくなる気持ちはよくわかりますが、性格テストで幸福度の高い適職を明らかにできるほど、我々は単純ではないはずです。
やってはいけない⑥:直感で選ぶ

ここまでやってはいけないことを羅列すると、いっそ直感で選んだ方が良いのではと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、落ち着いてください、ページを閉じないでください。
確かに日常のなかで直感が正しい場面もあるかとは思いますが、直感が正しく働くには、次の条件を満たさなければなりません。
- ルールが厳格に決まっている
- 何度も練習するチャンスがある
- フィードバックがすぐに得られる
このような条件が成立する場面でおいてのみ、直感というものは正しく働きます。
しかしながら、仕事探しはこの条件に全く当てはまらないことは一目瞭然です。
また、直感で意思決定する人は、自己正当化の罠にはまりがちです。
自分のした選択は正しかったと思う一方で、周囲からの評価は低い傾向がみられるのです。
そうならないように、直感で仕事を選ばないようにしましょう。
おわりに
本書の「やってはいけないことリスト」を目にした時、私は
「うわ~めちゃめちゃ就活の時やってた~」と、本屋で膝から崩れ落ちました。
そして即座に購入し、家に帰って読みまくりました。
ちょうどそのころ、転職を考えていた時期だったので、大変参考になりました。
とくに最初に挙げた「好きを仕事にする」ということ。
当時の私はそれさえできれば、仕事は全く苦ではなくなり、なんなら趣味をしながらお金を稼げるのでは?
なんて甘い考えをしておりました。
違うんですね。
情熱をもってやっていたことが、やがて好きなことになっていく。
至言です。
その後私は転職して、現在1年が過ぎました。
幸福度の高い仕事ができているかはまだわかりませんが、現状満足できています。
これからの人生で、また転職をすることはあるかもしれません。
その時はまた本書を読み返そうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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