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【地球の環境問題解決の糸口を見つけたい方に】「人新世の資本論」斎藤幸平

この記事では、斎藤幸平さんの著書「人新世の資本論」をもとに、現在世界を取り巻く地球の環境問題を解決する糸口を紹介していきたいと思います。

斎藤幸平さんは2020年時点で大阪市立大学大学院 経済学研究科で准教授として勤められています。

専門は経済思想、ならびに社会思想です。

人新世とは、人類の活動の痕跡が地球の表面を覆いつくしている時代のことをいいます。

また、資本論とは、現在のドイツの哲学者カール・マルクス(1818-1883)が記した著書のことを指します。

 

つまり「人新世の資本論」とは、カール・マルクスが遺した考え方を現代に当てはめて再考することで

人新世の時代を取り巻く地球の環境問題解決の糸口を見出す内容になっています。

 

今、地球上に生息する人類であれば、必読の内容だと私は感じました。

 

この本を読んでいただきたい方

・地球の環境問題解決の糸口を見つけたい方に
・地球温暖化に関心があるが、具体的に何をすればいいかわからない方
・技術革新により、そのうち地球の環境問題は解決すると楽観している方

地球の環境問題解決の糸口①:現実を知る

SDGsは「大衆のアヘン」である!

本書の冒頭は、いきなりショッキングな内容から始まります。それが、

『SDGsは「大衆のアヘン」である!』です。

 

地球の環境問題、なかでも温暖化対策が世界各国で叫ばれ、我々を取り巻く環境は変化しつつあります。

  • エコバッグを持ち歩いてレジ袋削減
  • ペットボトル飲料を買わずにマイボトルを持ち歩く
  • 電気自動車を購入する
  • 二言目にはサステナブル

このどれもがただの善意であって、環境問題の解決には繋がらないと筆者は述べています。

 

むしろ「温暖化対策をしている」と勘違いすることで、問題の本質を見失うことになりかねないと警鐘を鳴らしています。

 

政府や企業が推し進めるSDGsについても同じことが言えます。

SDGsの行動指針を政府や企業がいくつかなぞっているのは、いわばアリバイ工作であり、危機から目を背ける効果しかありません。

 

今まさに目の前に大きな波が迫ってきていることから意識をそらす、いわばアヘン(麻薬)のようなものなのです。

このことを現実として受け止めることからはじめましょう。

(私も含め)我々が日々行う小さな努力では、地球の環境問題はどうにもならないほどの緊急事態なのです。

 

帝国的生活様式

帝国的生活様式とは、先進国による大量生産、大量消費型の社会のことをいいます。

 

私達先進国の暮らしは、物に溢れています。

ファストフード、ファストファッションと呼ばれる比較的安価なものがあるおかげで、生活の質は上がり、それを豊かさとしてありがたがっています。

しかし、この豊かさは、裏に隠されている「発展途上国の豊かさを搾取すること」で成り立っています。

 

途上国では劣悪な労働環境、労働条件でしかお金を稼げない、いわば先進国との奴隷関係を強いられています。

加えて、普段生活しているだけでは、途上国の犠牲は目に見えません。

また搾取する豊かさの中に、自然環境も含まれます。

 

例えば、よりたくさん服を作るためには、より広い面積で綿を栽培する必要があります。

そこで、森林を伐採し、そこを綿の畑にしてしまうことで、途上国の人たちはより多くの収入を得ることができます。

 

植物は地球温暖化の原因物質といわれるCO2を取り込み、そこからエネルギーを作ることができる数少ないCO2固定生物です。

綿もCO2固定は可能ですが、森林と比べるとその差は歴然でしょう。

 

このように豊かさの搾取を、外部に転嫁し、かつ見えないようにしている社会構造を「外部化社会」といいます。

我々先進国の帝国的生活様式は、発展途上国から豊かさを搾取することでしか発展しません。

技術革新では防げない

現在、世界中で脱炭素に向けた技術革新が試みられています。

代表的なものに電気自動車があげられるでしょう。

 

しかしながら、電気自動車は確かに走行時はCO2を出さないかもしれませんが、その生産過程にまで目を向けると

それほど画期的な技術とは言えません。

排出を抑えるだけではダメで、大気中からCO2を回収する技術開発が求められます。

 

これから先、大気中のCO2をグングン回収して、かつそれがビジネスとして成り立つ技術が今後生まれるでしょうか?

大気中から直接回収するDAC(Direct air capture)やCO2を地中に埋めるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の技術開発が進められていますが

実用性に関してはまだ先が見通せない状況です。

 

このような技術開発を試みることが無駄だと言っているわけではありません。

それだけでは不十分なんです。

ではどうすれば良いのか、見ていきたいと思います。

地球の環境問題解決の糸口②:脱成長コミュニズム

脱成長とは、経済成長を過度に求めるのではなく、経済成長をスローダウンさせる考え方のことです。

そしてコミュニズムとは、生活を営む上で最低限必要なもの(衣服、土地、電気、水、食料、介護、医療などの生産活動全般)に希少性を持たせるのではなく、潤沢に共有されるものにしようとする考え方のことです。

 

つまり、脱成長コミュニズムとは、最低限必要なものを資本主義に独占させるのではなく民主化することで、経済成長を減速させ(かつ人間の欲求を満たし)地球の環境問題解決を図ろうとすることです。

その脱成長コミュニズムの柱となる構想が5つ挙げられています。

①使用価値経済への転換

本書では商品が持つ価値を「価値」と「使用価値」の二つに分類しています。

  • 価値とは、相対的に決まる価値のこと(1000円のTシャツより10000円のTシャツの方が価値が高い)
  • 使用価値とは、絶対的な価値のこと(1000円のTシャツも10000円のTシャツも、体を保護するという使用価値は同じ)

つまり使用価値経済への転換とは、相対的、あるいは希少性によって決まる「価値」よりも、

その商品が持つ絶対的な「使用価値」を重視しようということです。

こうなれば脱成長を促しながら、生理的な人間の欲求を満たすことができます。

②労働時間の短縮

①の「使用価値経済への転換」が行われれば、生産現場の働き方は大きく変わります。

物が大量に消費されないので、労働時間を短縮することができるのです。

 

これまでは大量消費するために長時間労働をしていましたが、使用価値経済への転換を果たした後は、

長時間労働する必要がなくなるので、生活の質が向上します。

 

またマーケティングや、広告、深夜も営業するコンビニ、年中無休などは必要なくなります。

必要ない仕事をやめる結果として、排出されるCO2の量は減少します。

③画一的な分業の廃止

多くの生産現場での労働は効率を最大化するためにマニュアル化され、かつ分業化されます。

このような生産現場での仕事はどうしても単調になるため、基本的に退屈ですよね。

労働が退屈であるからこそ、労働時間以外で、ストレスを発散できるような余暇を過ごそうとします。

 

しかし①の「使用価値経済への転換」が行われれば、生産効率の最大化は優先事項ではなくなります。

生産効率の最大化よりも、やりがいや活動の幅、地域貢献を重視することができます。

 

逆に言えば、このような労働を行うためには、①の「使用価値経済への転換」が必須条件といえます。

④生産過程の民主化

上記3項目のような意思決定を行うためには、生産現場の意志決定を、民主的に行う必要があります。

これが上層部や株主などの一部の人間によってのみ決定されるのであれば、経済成長を止めることはできません。

あくまで生産過程の意志決定は、そこに携わる人で民主的に行われなければいけません。

⑤エッセンシャル・ワークの重視

現代において給料が高いとされる職業は、マーケティングや広告、コンサルティング、金融業や保険業などです。

これらの職業は一見重要そうに見えますが、実際は無駄に長い会議や資料作成、Facebookの記事をまとめるなどの使用価値を生み出さない仕事ばかりです。

一方でケア労働(介護福祉士、看護師)や教師、農家、保育士などはロボットやAIでは代替しきれない使用価値を生み出す職業です。

わずかな変化に対して対応を変える仕事はマニュアル化やオートメーション化はほとんどできません。

このような職業を総じて「エッセンシャルワーク(不可欠な仕事)」と言います。

 

しかしながら、人類にとって不可欠であるエッセンシャルワークの給料は、先に挙げた使用価値を生み出さない職業よりも低い場合がほとんどです。

このような状況だからこそ、「使用価値」を重視する社会への移行が必要となるのです。

地球の環境問題解決の糸口③:3.5%の行動が世界を変える

そうはいっても、私たちの生活は資本主義にどっぷりとつかってしまっているため、そう簡単には抜け出すことができません。

ここである研究をご紹介したいと思います。

ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、「3.5%」の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのです。

  • フィリピンのマルコス独裁を打倒した「ピープルパワー革命」
  • 大統領を辞任に追い込んだグルジアの「バラ革命」
  • ニューヨークのウォール街占拠運動

などは、3.5%の非暴力な市民不服従がもたらした社会変革の一例です。

 

記憶に新しいグレタ・トゥーンベリの学校ストライキにいたってはたった一人です。

しかしその行動が社会に大きなインパクトをもたらします。

デモやSNSを通して、数十万から数百万へと瞬く間に拡散されます。

 

この「人新世の資本論」を読んだ人が、今この瞬間から動き出すことを著者は訴えています。

学校ストライキでもいい、有機農業でもいい、地方自治体の議員を目指すのだっていい。

環境NGOで活動する、今所属している企業に環境対策を求める、SNSで本書を紹介する、なんだっていいと思います。

一人一人の参加が、3.5%による変革には重要になります。

 

読後に感じた事

地球の環境問題が悪化するのは、自分がこの世からいなくなってからだから大丈夫では?

という楽観的な意見を、私は少し持っていました。

しかしながらそれは誤りで、地球の環境問題が修復不可能になる日はもうすぐそこまで来ています。

もちろん本書の晩年のマルクスの思想を読み解き、脱成長による解決を図ろうとする試みは賛否両論あるでしょう。

まずはぜひ一度手に取って読んでみてほしいです。

 

この記事では問題提起から、一気に解決策まで飛びましたが、本書ではその経緯や理論がより詳細にかつ力強い言葉で語られています。

 

私個人としては、まずは無限に湧き出る欲求とは決別して消費活動を抑え、自分にできる行動を考えていこうと思います。

長文にもかかわらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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