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【正解のない問いで悩むビジネスパーソンの方に】「武器になる哲学」山口周

今回は山口周さんの著書、「武器になる哲学」を称します。

哲学と聞くとそれだけで「哲学=小難しいよくわからないもの」とイメージし、読む気が失せる方もいらっしゃるかと思います。

 

哲学は一言でいうと、「答えのないものに最適解を持たせる方法を学ぶ学問」だと私はとらえています。

学校で習う勉強には、問いに対して必ず答えが存在します。

 

しかし学校教育が終わってからの人生では、答えのない問いがたくさん生まれます。

  • 自分にとって幸せとは何か
  • 生まれてきた意味とは
  • 愛するとはなにか

こういった、簡単には答えが出せないもの、人によって答えが異なるものにたいして、古より繰り返されてきた思考実験をまとめたものが哲学です。

情報社会が発達し、資本主義社会になった現代を生きる我々は、あまり自分の幸福や人生の意味を考えないようになっている気がしてなりません。

 

そんな我々にとって、哲学は重要な意味をもつと思いませんか。

そこで、これまで哲学書を数多く読んできた私が、現代を生きるビジネスパーソンにおススメな哲学入門書をご紹介したいと思います。

この本を読んでいただきたい方

・哲学書を読んで挫折したことがある方
・ビジネスパーソン
・使える哲学を知りたい方

本書が他の哲学入門書と異なる点

私はこれまでに哲学者自身の著書、いわゆる原著も読んできましたが、どうもそういったものは読みにくかったりします。

また、「哲学入門」を謳ったものは、たくさん出版されています。

では本書は他の哲学入門書と何が違うのか?

それは以下の3点です。

目次に時間軸をおいていない

ほとんどの哲学入門書は、「哲学史」に基づいて編集されています。

「古代ギリシアから始まり、近代にいたるまでの哲学」という時間軸にそって、各時代の代表作が述べられます。

 

ここに哲学初心者が挫折してしまう理由があります。

つまり、古代ギリシアで語られた哲学はあまりにも自明のことであったりするため、面白くないものが多いのです。

入門書の冒頭で出てくる哲学がツマラナイものだと、当然それ以上は読む気が失せてしまいますよね。

 

そのため、本書の構成には「時間軸で並べて哲学史を学ぶ」視点が採用されていません。

では何に基づいて構成されているかというと、それは使用用途別です。

  • 人に関して(なぜこの人はこんなことをするのか考える)
  • 組織に関して(なぜこの組織は変われないのかを考える)
  • 社会に関して(いま、何が起きているのかを理解する)
  • 思考に関して(「思考の落とし穴」に落ちないために)

このように「何について考える際に有効かなのか」という使用用途に基づいて、哲学が整理されています。

個人的な有用性に基づいている

一言でいうと、日常使いできて役に立つ哲学だけ選定されています。

  • 哲学といったらこの人は外せないでしょう。
  • カント、スピノザ、キルケゴールが抜け落ちている哲学入門書なんて…

といった批判は一切無視して、あくまで使えるかどうかに基づいて編集されています

 

著者である山口周さんは経営コンサルティング会社を経営されています。

山口周さん自身が、これまで仕事をしてきた中で役に立ったものに絞られています。

著名な学者が解説するものよりも、今現役で働いていて、成功をおさめられている人が

「この哲学は役に立った!」と太鼓判を押しているものの方が、私は知りたいです。

哲学以外の領域もカバーしている

本書は必ずしも、哲学だけに的を絞ったものではありません。

具体的には、経済学、文化人類学、心理学、言語学などについても触れています。

 

これは本書に限ったことではなく、他の入門書でも、ひいては哲学という分野においてはよくあることなのです。

 

どういうことかというと、哲学を進歩させてきた人は、哲学以外の分野を専門としていることが往々にしてあるからです。

異なる専門分野で功績を上げた結果、哲学においても影響を与えることになった、ということが頻繁に起こります。

そのため、あら揺る分野での発見や知見を採用して、本書は構成されています。

役に立つ哲学を紹介

ここからは本書で紹介されているなかでも、私自身が「役に立つ」と感じた哲学を一つだけ紹介したいと思います。

なお、本書では50個の哲学が紹介されているので、あなた自身の役に立つ哲学を探してみてください。

自由からの逃走(エーリッヒ・フロム)

現代に生きる私たちは、「自由であること」を無条件に良いものだと考えています。

しかし本当に自由であることは、それほどに良いものなのか、とフロムは自由に対する認識を主著「自由からの逃走」の中で疑っています。

 

現代における自由というと、「金銭的な自由」が最も多くあげられるのではないでしょうか。

今後の人生で必要なお金が手元にあれば、と考えたことは誰しも一度はあるでしょう。

パラレルキャリア、働き方改革、副業などが崇め奉られているのも、そういった世の中を反映している証拠です。

 

仮に宝くじが当たって10億円という大金が手に入ったとして、その人は本当に自由を手に入れた言えるでしょうか。

自由を手に入れたその時から、人は耐えがたい孤独と痛烈な責任を負うことになります。

そのような自由を手に入れた人は少数派であるため、共感されることはなく、疎まれる対象にしかなりません。

また、莫大な資産を手に入れたからと言って、何にお金を使ってもいいということはありません。

 

ではどうすれば自由になれるのか。

フロムの分析によると「自我と教養の強度による」というのです。

自由というものが突きつける重荷に対して、我々はあまりにも訓練されていません。

自由な立場になったとして、豊かに生を謳歌するためには、個人の成長、自分自身で物を考えたり、感じたり、話したりすることが重要です。

何より、自分自身であることに対して勇気と強さを持ち、自我を徹底的に肯定できる教養を有する人だけが、真の意味での自由を手に入れることができます。

読後に感じたこと

私は本書を手に取る前に、山口周さんの著書をいくつか読んでいました。

  • 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?(光文社新書)
  • ニュータイプの時代(ダイヤモンド社)

などです。

 

そこで論じられた知見に感銘を受けたので、本書を見たときに、あの人が参考にした哲学とはどんなものかと知りたくなり、迷わず手に取りました。

私自身、本職はサラリーマンをしているので、どうしても組織というものに属し、人に対する悩みを抱えざるを得ません。

 

自分がこれまで大切にしてきたことを、まったく重要視しない人、平気で侵害する人がたくさんいることを、社会に出て気づきました。

どう解釈したらいいのか理解できないものがあるとき、人は強いストレスを感じます。

この本で語られた哲学は、私の悩み、ひいては現代人が感じるモヤモヤ、名前の付けられない悩みに対しての処方箋となります。

 

治癒されるわけではないですが、病名と薬を処方されたような感覚を覚えました。

以来、頻繁に読み返しています。

自分の血肉として哲学を吸収するために、これからも定期的に読み返したくなる本でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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